銀の杯条約と兵器復活について

アニメ本編9話くらいまで見た時の所感。
とりあえず公式が年表の詳細出したり、設定を提示
してくれないので、こうなのだろうか?と思ったモノを
書き纏めた。

公式がババーンと詳細を出してくれるのを
ひたすら待つのみですね…。

【銀の杯条約ってなんぞや】
 宇宙大戦時代の末期にコロニー国家群が締結したと思われる
 完全なる軍備放棄条約?これは恐らく連邦制に移行する
 段階で行われたものと推測されるが、ザラムとエウバが
 数百年抗争を繰り広げたと劇中の人物が語ってる事から
 長く果てしない戦乱の結果、相当な嫌戦ムードが人類に
 蔓延した結果と思われる。少なくともAGE世界の人類は
 過程こそ不明だが一度は殺し合いに待ったを掛ける事に
 成功した模様。

フリット達が銀の杯条約を知らなかった理由?】
 イワークさんが説明できたことから、知る人ぞ知る
 ものっぽいが、最初はなんでMS鍛冶屋のフリットまで
 知らないの?と思った。視聴者への説明と言う事情
 を横に置けば、AGE世界の事情はこの中に絞られるかな?
 と考えた。

 A:連邦体勢に移行後、『銀の杯条約』は連邦法に定められる
  『常備軍に関する法令』に引き継がれた。
  この形ならお役目御免となった条約は知る由もない。

 B:条約は現在も生きているが、これを習うのは高校生か大学生。
  →フリットガンダム開発にだけ興味があり、法令はアウト
   オブ眼中だった。

 C:連邦の歴史教育では過去数百年の戦乱に関する内容は
  「人類の暗部、汚点」であり、うかつに教えると「コロニー国家主義
  など分離独立思想を再興させる可能性があるので、極力教えたくない。
  なので、よほどの興味を持って自発的に動かないと知る機会が無い。

  一方で国家派閥の抗争を放置なのは、止めるためには鎮圧という流血が
  伴うので、それを背負いたくないという体勢側の逃避行動の結果と思われる。

【大戦時代の兵器を復活出来るか?】
  設計図は残っているので可能と思われる。ただし時間が経てば経つほど
  難易度は跳ね上がってしまう。

  とりあえず資金と人材を惜しみなくつぎ込めば、生産数に問題は生じても
  試作品程度なら再生産に辿りつけるはず。なにぶんにも大戦時代から長い
  歳月が経っており、戦闘兵器の再生産というのはかなり困難と思われる。
  下記よりその辺についてのメモ

【設計図の意図を理解できる人がいない可能性】
  劇中「本当の戦争」と語るシーンがある事から
  少なくとも彼らは戦争世代ではなく戦後世代。最後の世界大戦は
  一世代以上前と推測される。当時の技術者が存命なら設計図に
  書かれる事を現代の技術者に伝える事は出来るが、居ないかボケて
  伝えられないなら問題が生じる。

  連邦体勢への移行に伴い、公用語の制定は避けて通れないので
  ある言語は急速に廃れる事になる。当然この言語で書かれた
  図面や関係資料は読めない事になる。さらに国や地域による
  ローカルな工業規格も統一が推進された場合、これも旧規格を
  読み書きできる人間は時間の流れと共に数を減らす事になる。

  翻訳機も商業品では需要の無い事から、あるかどうかも怪しく。
  あっても開発費捻出との関係から精度も信用できない。誤訳の危険が
  付きまとうし、これが正しい翻訳か結局人による再チェックは
  避けられない。この辺り、設計書に書かれた記述を読むために
  言語学者が呼び出しを食らっていてもおかしくはない。

  MS鍛冶屋は当時の技術者の流れを汲んだ存在と思えるが、軍需品から
  民生品一本に乗り換えたことからこの線も厳しい。
  彼らが再軍備に備え、特別に当時の技術を受け継いでいたらなら話は
  別だが、武器密造の疑いで逮捕されかねない。

  備考1:
     アスノ家も救世主と呼ばれた戦時中の『ガンダム』再製造に
     こぎ着けていなかった。AGEデバイスに残された設計図が
     これかどうかは明言されていないので不明。それに軍から依頼が
     あったのかも不明。これが明言される日は来るのだろうか?
     両親がオーヴァンで何をしていたかは、特に明かされていない
     ので、MSVなど外伝ネタはここから始まるかもしれない。

  備考2:
     現代のJIS(日本工業規格)やIS(国際規格)
     アメリカと日本ではネジの規格(MネジやPFネジなど)すら違う。
     さらに寸法表記であるメートル法ヤード・ポンド法など
     いまだに規格は統一出来ていない。
     コロニー国家が数百年にも及ぶ戦乱に身を投じた時代に
     言語、規格の統一は考えられない。

【材料や製造設備、取り扱える人が無い】
  あくまでたとえ話だけど、これは「料理の本」はあっても食材や
  それを加工する料理人、調理道具などが一切合財無いという感じ。
  本を見てカレーを作ろうと思ったら、まずは野菜を作ったり
  調理器具を作る所からスタートする事になる。  
  (民生用MSの製造法は残ってるので幾分ハードルは低いけど)

  私達の家の台所にあるステンレス製鍋やフライパン、セラミック
  製の包丁など一度製法が廃れたものをずぶの素人、よくてもそれに
  近い業界の人間が復元に挑むのは非常に手間となる。戦闘用MSとも
  なれば立ちはだかる技術的障壁はステンレス鍋の比では無い。

  連邦政府がMS設計図を元に再製造を試みようとした場合、民生品
  用途には向かず廃れた製造設備や付随技術を再建するところから始まる。
  (下手をすればこの製造設備の部品を製造する製造設備から…)

  備考1:
     連邦軍の兵装がビーム兵器主体で、実体弾があまり積極採用
     されていないのは、UE襲来以前には火薬を必要とする事が少なく
     閉鎖環境のコロニーでは安全上のリスクとなる事から衰退
     したことを示唆しているのかもしれない。火薬庫が吹き飛んで
     大規模火災が一たび起きれば、コロニー内の酸素が一気に失われる
     事になる。化学プラントで一酸化炭素などの除去や酸素の生成が
     出来ても、これには限度があるので火災事故は起きない方がベスト。

     この辺、ノーラでUEがエネルギープラントを狙わなかったのは正し
     いと思える。抹殺が目的ならコロニーの生命維持システムの根元を
     断つのが手っ取り早い。これに気付いたミレースさんは鋭い。

  備考2:
     上記問題点からAGEビルダーは驚異のメカニズムと言える。
     そりゃバルガスも持ちあげるよ…。

【ハードを再建できてもソフトも一から作り直し】
  精密部品の固まりであるハードをコントロールするソフトウェア自体も
  作り直しになるが、当時の開発環境下で製作されたプログラムの為
  これも現代での復元は大変な道のりとなる。

  使用されたコンピュータ言語、開発環境、ハードウェアに合わせた
  プログラムのチューニング処理など苦労は絶えない事になる。

  当時のOSがZIPで残っていたならラッキーだが、ハード側の復元に
  問題が起きればこれは使い物にならない。電子部品とのすり合わせ
  を一から行う事になるので、結局ソースコードから組み直す事になる。

【作っても持て余す?】
  『料理の本』問題は製造だけではなく、再建した軍隊の運用にも及ぶ。
  MS隊や艦隊を効率よく運用する為にはパイロットや指揮官を育てる事が必要に
  なるが、常備軍が無いとなると当然それを教える人がいない。知っている人もいない。
  現実世界では他国から軍事教官を招いてノウハウを取得する事があるが、AGE世界
  にはそれも不可能。

  恐らくマニュアルだけがポツンと取り残されているので、これを読み込んで
  あーだこーだと実践して取り込んでいく事になる。柔道なんかの教本を
  読んだからと言って、すぐプロになれるわけではないしね…。
  (運が良ければシミュレーターくらいはあるのかな?)

  さらに常備軍を一度持つと、これを捨てるのか?維持するのか?という
  問題もある。UEを一度殲滅しても、またいつか連邦に仇名す者が現れるのでは?
  という疑念が付きまとう事になる。維持するにしてもコストが悩みの種になる。
  装備更新は仮想敵国がいないことから要件定義が纏まらない。
  そんな連邦政府の政治的悩みもあって軍の再建は上手くいっていないのか
  もしれない。

【市場の需要と供給で淘汰される技術】
  民生品でもレーダーや推進機関は必要とされるので、戦闘用MS
  も復活出来るのでは?と思うけど、実際のところ軍需品と民生品では
  求められる仕様(性能や耐久性)が違ってくるので、すぐに
  復元できるというわけでもない。この辺は民間船舶の水上
  レーダーとイージス艦に搭載されるフェーズドアレイレーダーを
  見ると分かりやすい。一口にレーダーと言ってもだいぶ姿かたち
  や中身も違うし、調達費用や運用費用も違う。

  ガソリンエンジンにしても、レーシング用と自家用車(軽・普通)用では
  その用途に合わせ設計が違う。(加速度や巡航距離、燃費、耐久性など)
  同じカテゴリのエンジンでも使われる用途に合わせ、それぞれ別の道へ
  進化しているため、急に転用すると何かしら不具合が起きる事になる。  

  軍備放棄を始めた当時の連邦政府が、常備軍の再建を見越した技術
  保護性政策を取らない限り、民間会社が好き好んで採算の取れない
  部門を残すはずが無く、ほっておいてもこの道は自然と廃れる事になる。

  大戦時代から長い歳月が経過してるので技術的進歩があるかもしれない
  と思えるが、これも所詮は需要と供給の結果であり、技術革新を
  必要としない情勢なら発展は一気に停滞する事となる。
  空を飛び始めたと思ったら月まで行った20世紀の発展が異常な
  だけで、それまでの発展は実に緩やかなものだった。

  AGE世界は大戦時代が技術発展を極めた時代で、その後は行き着く
  とこまで辿りついたので緩やかになったものと思われる。

  備考:
    実は連邦がUEの黒幕で月面基地には旧時代の製造設備が
    綺麗に残っており、スタートボタンを押せば無人運転
    すぐに大戦時代のMSが完成品で用意できる。ならこの辺は
    かなり無意味な話になる…

  補足:
    需要と供給が釣り合って、世間もそれ以上を求めない結果。
    車のワイパーや傘も原型モデルのマイナーチェンジに留まっている。

  追記1:
    ガンダム世界は計画すれば大概成功するが、現実はそうも
    行っていない。現在開発中のF35に装備予定のエンジン開発は
    難航していたり、韓国軍では主力戦車へ搭載予定のパワーパックに
    問題が生じていたり、日本でも次期輸送機開発で問題が発生している。
    常に何かしらの問題は起きている。

  追記2:
    軍需産業の衰退は、戦後日本におけるGHQ発令による航空産業
    解体が元ネタなのかもしれない。

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