ガンダムAGE1開発計画とその後

【1】
 ノーラのアリンストン基地で独自に開発されていた
 MSがガンダムであるが、UEの襲撃に会いなし崩し的
 にディーヴァへ搬入され、グルーデック率いる反乱軍
 の主力を成した。

 さてこうなる前の、本来の開発プロジェクトは
 どうだったのか?とかMS自体の評価、連邦軍の兵器
 運用に与えた影響について

【2】
 AG101年「天使の落日」により再興した連邦軍
 過去の軍備解体に伴い軍事技術が大きく衰退していた。
 ダーウィン級戦艦やジェノアスの実戦配備で軍の体裁
 を整えても実体は非常に脆いものだった。

 それこそ「張子の虎」と言えるものであり、UEが総力戦
 を仕掛けた場合、これを防ぐ手立てが地球連邦軍には
 無かった。

 それを実感し危機感を抱いていたのが、最前線となる
 コロニー駐留軍だったのではないだろうか?実戦部隊
 が配備されたが未だにUEの攻撃はある。そして連邦軍
 彼ら"敵"を撃破したことも無ければ、正体を暴く事にも
 成功していない。再建した理由、根本的な問題を解決
 するに至っていないのだ。

 継続されるUEの破壊行動、これが何らかの目的に沿った
 軍事行動なら彼らは未だにその目標を達成していない事
 になる。対象が軍を組織して抵抗しようとも、なお作戦
 を続行できるのは彼らの軍事力、UEのMS型が連邦軍
 ジェノアスより優れているという自信の表れでもある
 だろう。

 この不可解な名前の無い紛争、戦争が長期化するのは確実だ。
 状況がいつ一変するかは分からない。その時確実に戦力・
 抑止力として機能する軍事力が今以上に必要となるのは明白だ。
 これから先を見据え張子の虎ではない真の軍隊として活動
 できるよう、失われた軍事技術の再取得やジェノアスを
 超える戦闘用MSの開発を考えたのがブルーザー司令だった。

ガンダム開発計画の目的】
 目的は大まかにこの三つに集約される。問題は当時あえて
 フリットを招聘したことだ。わずか七歳の子供に頼るほどに
 民間での技術が落ち込んでいたことの表れなのだろうか。

 ・MS鍛冶屋の持つ失われた技術の習得
 ・連邦軍の技術者育成
 ・ジェノアスを超える高性能MSの会得

 とにかくMS鍛冶屋アスノ家の協力の下、連邦軍の軍事技術
 増強が始まった。総司令部による中央主体のプロジェクト
 ではないが、ここで得たノウハウは軍の血となり肉となる。
 ブルーザー司令が軍内部で正規の手続きに則り、許可を得た
 事実がある。これはビッグリングが協力はしないが有効な
 成果だけは欲しがっている事を意味している。

 ただこのガンダム開発計画はもともと中央主体だった可能性
 もある。計画が実行に移される前にオーヴァンが襲撃され
 アスノ家はフリットを残して全滅した。そのため計画は頓挫
 したが、これをブルーザー司令が強引に引き継いだとも考え
 られる。

【MS鍛冶屋の存在感の無さ】
 旧世紀から続く鍛冶屋は今のところアスノ家くらいだ。
 そのアスノ家も跡取りが居らず、このままキオが継が
 ないならMS鍛冶屋としては途絶えることになる。

 一方で一代でMS鍛冶屋を興したマッドーナのような
 人物もいる。なぜマッドーナがノーラに呼ばれなかった
 のか?またアスノ家のように旧世紀から続く実績ある
 MS鍛冶屋は他にいないのか?また呼ばれなかったのか?
 前者の理由は恐らく「旧世紀の技術を持たない」
 後者の理由は「そもそも他に頼れる人物がいなかった」
 という結果に行き着く。

 マッドーナ工房の技術力は折り紙付きだが、彼の実力は
 おおよそ合法とはいえない裏社会で発揮されていた。
 これらは世間に知られてはいけない事実だ。
 ブルーザーが彼の実力を知る機会はまず無い。民生品で
 実績があるとはいえ軍事用途となると話は別だ。
 このため候補から外れたのだろう。

 後者に関しても、長い歳月でMS鍛冶屋を廃業したり、元々
 多くの技術を継承しなかった所もあるだろう。
 またUE襲撃から約七年が経過しており、この間に彼らが
 殺されている可能性がある。
 事実、アスノ家がいるコロニー「オーヴァン」も攻撃に
 会い、フリットを残して一族が全滅している。

 それ以降の戦乱で第三のMS鍛冶屋(メーカー)が名を上げる
 ことはなかった。戦争の本格化で軍から要求される厳しい
 条件を満たす事が出来なかったのだろう。
 その結果か、軍の補給物資・兵器生産は地球にもっとも近い
 コロニー「ノートラム」に集約されたのかもしれない。
 このため一般の技術力・生産能力を余り持たないMS鍛冶屋
 は市場から排除される形になり、廃業に追い込まれている
 可能性がある。

【AGE1の与えた影響】
 特徴的なウェアシステムからも明らかだが、ガンダム
 得た成果はジェノアスに反映しにくい。

 ガンダムは軍の未熟な技術者を育て、次世代MSの基礎を
 築くのが目的であり、「情報収集実験機」「技術実証機」
 としての意味合いが強い。機体自体が高性能なため、
 実戦に耐えうる事も可能だが、本来はアリンストン基地
 内の研究所で多種多様な実験・模擬戦に投入してデータを
 収集したり。フリットの作ったAGEシステムで新たな
 兵装開発、基礎研究を目論んだものだろう。

 AGE1の基本性能が対ガフランを想定しているため、対
 ビーム装甲、そしてこれを破壊できる高出力武器
 ビームサーベルの標準装備となっているが、初めから
 実戦でガフランと交戦することは考えられていなかった。
 もともとUEは神出鬼没、しかも人口密集地帯には出現
 しない傾向がある。このためガンダムが完成しても敵と
 遭遇することはかなり難しかった。
 ※UEのMS型はジェノアスを脅威と見なしていないと判断。
  ジェノアスを凌駕するスペックの仮想敵αを設定。
  さらにこの仮想敵αに対抗できるMSをガンダム
  要求スペックとした。

 ノーラで実戦に参加した結果、偶発的に実戦データの
 収集に成功。そしてAGEシステムがガフランの対ビーム
 装甲を破れるドッズライフルを開発した。
 ここからガンダムと関連機材はノーラ脱出のため
 戦艦ディーヴァに収容されることになるが、このまま
 グルーデックの反乱に巻き込まれることになり、常に
 最前線で戦うことになる。これは当時貴重だった
 「UEとの戦闘」が恒常的に体験でき、実戦データ収集
 の機会に恵まれることになる。

【アンバット戦後】
 戦後は第一線から外れるが、直系の量産機アデルが
 25年後にロールアウトする。これは開発者のフリット
 連邦軍上層部に入り、彼の指示の元で次世代機開発に
 取り組んだ結果だろう。

 なにせ当時の主力機はどれも民間機の転用モデルであり
 、純粋な軍事用途で開発された機体は無かった。
 フリットにとって、アデル開発計画はノーラで推進された
 プロジェクトのある意味で総仕上げだったのかもしれない。
 アデル実戦配備をもってブルーザー司令の計画は25年越し
 で実った。

 問題はここからである。彼は一つ間違った。
 ガンダムで得られたノウハウを元に次世代量産機を開発すれば
 よかったのに、AGE1そのものを量産化してしまった。
 その結果、AGE1の抱える実験機としての機能まで量産機に
 搭載されてしまった。

 アデルは良好な性能を有するが、ガンダムから受け継いだ
 ウェアシステムは軍全体。一般現場では持て余す代物だった。
 AGEシステム、つまりロストテクノロジーが取得したデータ
 を元に作り出す特殊兵装のため、人間が新規開発するのは
 非常に困難だった。ウェアシステムを軍の開発者が使いこなす
 までには至らず、AGEシステムが作り出した「タイタス」
 「スパロー」装備を量産する程度に留まり、軍が独力で
 開発したキャノン(C型)装備が少数生産された結果に
 終わった。実際のところ、この「キャノン」装備は
 アデルをベースとする必要が無い。それこそ高いカスタム
 性が売りのシャルドールをベースにキャノンパックを
 装備すれば済むことなのだ。ウェアシステムは実戦で有効活用
 されることもなく、対費用効果から見ても不必要と判断されても
 おかしくない装備だった。
 (事実、戦場のアデルはノーマル型がほとんど) 
 ※見ようによっては議会やフリット派への実績作りか?
 ※局地戦に特化したウェアを使いこなすには機種転換訓練
  並の慣熟訓練を要する必要があり、現場パイロットの
  負担が大きかった可能性がある。

 このため連邦軍はそれ以降のMS開発計画でAGEシステムを
 組み込むことを避けた。AGEシステムから得られる技術は
 積極的に利用できるが、これに依存すると兵器運用及び
 追加兵装の開発・量産に支障をきたす事がアデルで発覚
 したからだ。
 (もっとも開発初期の段階で予想されていた事だが、彼の
  軍内部の発言力で押さえ込まれていた可能性もある)

 また軍の意向とは関係なくAGEシステムは勝手に開発を
 行う。求めるものとは違う何かを作り上げる可能性があり
 不安定なシステムに依存する危険性を排除したかった。
 これは連邦軍の運用システムに合わせて兵器を作るの
 ではなく、ウェアに運用システムが振り回されるためだ。
 機械に人間が扱われるのでは困る。



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