AGE3とクランシェから見る連邦の内情

固執し過ぎた救世主】
 AGE3は連邦軍製ではなくフリット
 個人が作り上げた機体のようだ。
 なぜ軍上層部にまで上り詰めた彼が
 1人で作っていたのだろうか?

 これは連邦軍、クーデター後の政権内は
 一枚岩ではなく。また現場の要望がAGE3
 のようなMSを求めていなかったからに
 尽きると思う。

 フリットは少年時代より救世主"ガンダム"
 に固執してる節があり、AGE2大破の一件で
 より高性能な、より完成度の高い機体を
 追い求めたのだろう。

 より良い剣と鎧、彼は残りの人生を救世主
 の名に相応しいMS作りに没頭した。

 彼の退役理由はクーデターによる混乱や
 一連の行動に対する一種のけじめ、連邦国民
 の不満そらしにあるのではないだろうか。
 彼自身が権力の座を去っても、すでに親
 ヴェイガン派の人間はおらず。このまま
 戦争は継続される。

【クランシェについて】
 この機体は連邦地上軍(仮名)に欠けていた
 空軍戦力と地上に潜伏する敵を即時に叩け
 るMSを求めた結果ではないだろうか。

 ノートラム防衛戦で移動要塞ダウネスは
 航行不能になり、地球へ落下した。
 破壊活動で被害を抑え込む事には成功した
 が多数の破片に紛れ、ヴェイガンの地球侵入
 を許してしまう。

 一年後の首相暗殺未遂事件を見ても演説会場
 に敵MSの侵入を許すなど、地球上の防衛
 戦力はかなり脆いのがうかがい知れる。
 (降下した敵を掃討する事も出来ていない)

 とくに航空戦力がAGE2のみというのが
 驚きだ。地上に少数のアデルが配置された
 だけで、早期警戒機は見当たらないし空軍
 の戦闘機すらないようだ。

 本編の描写を見ると、連邦地上軍は相当規模
 も小さく、地上戦に対応した装備もろくに
 無いと思われる。

 これ自体は親ヴェイガン派のオルフェノア
 首相一派が地上軍の弱体化を図ったのかも
 しれない。あるいは主戦場が宇宙なので宇宙軍へ
 予算を優先し、バランスを欠いた国防政策
 が招いた結果とも見える。

 思い返せばビッグリング防衛戦で
 「最後の一兵まで戦え」なんて演説をした
 あたり、地上軍はあまりに規模が小さすぎて
 一度地球に侵入されると取り返しのつかない
 事態に陥るという危機感があったのだろうか?

【増強が急務となる地上軍】
 地上軍に足りない航空戦力、広大な地上で
 素早く戦力(MS)を展開できる事。それを短期間で
 実現できる候補がAGE2系量産機クランシェだった。
 航空機形態で作戦エリアまで急行でき、空中戦
 から地上部隊への火力支援、必要とあればMS形態
 に変形して地上戦への対応も可能だ。

 これをアデルで実行しようとすれば飛行用ウェア
 を開発する必要があるし、成功するかも分からない。
 クランシェに比べると確実に航続距離が劣ると考え
 られる。これを補うには専用のMS輸送機の開発、
 量産配備も行う必要が出る。さらにこれを護衛する
 戦闘機の必要性もある。

 それならすでに実績のあるAGE2を量産したほうが
 確実だ。短期間で問題に対応できる。
 可変機だから整備性が悪化したり、生産コストが
 悪いと考えられるが、それよりもまず航空戦力
 と即応可能な戦力の拡充が急務だから問題には
 しないだろう。

 ※追記
 クーデター前の国防予算で足りないとしても
 今や軍事政権、予算は取り放題なので問題には
 ならない。だがどこかにしわ寄せは行くので
 国民の不満は高まるだろうし、対ヴェイガンなら
 予算増額が簡単に通りそうなので、予算の着服
 など不正の温床になるだろう。

 この辺はビシディアンの言う連邦の腐敗の一端
 に繋がるかも。

【火星本拠地へ侵攻はするのか】
 この戦争を終わらせるには火星側まで進出する
 必要があるが、連邦軍の艦艇では航続距離の
 問題や兵站上の問題から実行不可能だ。
 (ダーウィン級は地球圏内での活動が前提)

 別途、惑星間の遠征に耐えうる艦船の建造や
 特別な艦隊の編成が必要となるが、先に書いた
 地上軍(恐らく陸海空軍)の増強、さらに地球圏内
 でのヴェイガン掃討と海賊対策が先となり、火星
 遠征は後回しとなる。

連邦軍ガンダムの後継機を作らない理由】
 単純にガンダムを作る必然性が無いためと
 思う。軍が必要なのはヴェイガンに対抗できる
 兵器であって、救世主”ガンダム”ではない。

 フリット編で言えばドッズガンとビームサーベル
 さえあればジェノアスですら戦えるのだ。
 質と量を兼ね備えた武器・兵器、そして兵士が
 安定して扱える物が求められる。

 必要があれば次世代機の開発を始めたらいいし、
 それがあえてガンダムである理由は無い。

 そしてフリットが開発に挑んだAGE3は連邦軍
 求める兵器ではなかった。高性能を追求する
 余り肥大化した機体は、軍と言う組織で運用
 するには不適切な代物となった。

 アデルですらウェア換装を持て余しているのに
 機体の分離合体、さらにコクピットの飛行能力
 と非常に扱いにくい仕様だ。

 ダーウィン級で運用しようにも、格納庫は分離した
 機体やスペアパーツで溢れ返るのは確実だ。
 一体ならまだ大丈夫だろうけど、一個小隊分となれば
 話は変わってくる。

【派生機の可能性】
 大気圏内向けの航空機を持たない連邦軍、そうなると
 クランシェは貴重な戦闘機だ。大気圏外から降下して
 来るヴェイガンの部隊を迎撃できるようにロケット
 ブースターを装備した高高度迎撃機仕様もいた
 かもしれない。


【関連記事】
 ジェノアスから見る連邦政府の防衛計画
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 軍属になったフリットのその後とガンダムの所在
 http://d.hatena.ne.jp/UN64_RGB/20120212/1329066667

 ヴェイガン本拠地への道のり
 http://d.hatena.ne.jp/UN64_RGB/20120217/1329494903

 ダナジン開発経緯を考える
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 ガンダムAGE1開発計画とその後
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 AGEデバイスと救世主ガンダム
 http://d.hatena.ne.jp/UN64_RGB/20120620/1340200432

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 AGE世界におけるMSの操縦難易度
 http://d.hatena.ne.jp/UN64_RGB/20130127/1359261172