理想と現実の狭間に追い込まれ、振り回されたゼハート

ゼハートはエデン計画を理想郷の体現程度にしか認識していなかった
ようだ。そのためアセムに軍を去るように言った。これは戦争から
遠ざかれば地球側の市民でも生き残れると考えていたのだろう。彼の
中では限られた小さな武力行使、限定戦争と甘く見ていた。だが現実
は違い、彼の知らないところでヴェイガンによって民間人の虐殺や
コロニーそのものが破壊されていた。この事実がゼハートの目の前に
突きつけられたのはオリバーノーツでの出来事だろう。攻撃目標が
軍事拠点ではなく市街地であり、民間人を襲う異常性は彼も認識
できたはずだ。

戦争の暗部、争いの無い世界を作るはずのエデン計画で人々を襲う矛盾
を目の当たりにしたものの、それがイゼルカントの命令なら従うしかなく。
彼は無言で燃え上がる市街地を見ることしか出来なかった。そこへ出現
したガンダムAGE3との戦闘は一種の現実逃避に繋がり、戦いに没頭する
事で不安を忘れようとした結果があの笑みなのかもしれない。

ゼハートは自らを戦士と自称していた。マーズレイに苦しむ火星圏
の人々を地球へ連れ帰るために戦う事を誇りに思っていたのだろう。
それだけに学園でのスパイ生活が終った後の出来事は、彼を困惑させ
悩ませ続けた。唐突に司令へ抜擢され一般兵は不満を漏らし、作戦の
失敗から兄のデシルは嫌味を言い。ビッグリング攻略作戦は失敗して
甚大な被害を出して敗走。Xラウンダー部隊にはブリッジにまで来て
抗議を受ける有様だった。唯一メデルやダズと言う理解者・協力者は
いたものの、彼らも程なく戦死してしまう。信奉していたイゼルカント
は自身の失敗を咎める事も無く、また新たな指令を出す。そこには
違和感があった。彼の足場は徐々に崩れ、孤立を深める一方となった。

ノートラム攻略戦失敗以降はコールドスリープで160年代まで眠って
いたようだ。164年のヴェイガン一斉蜂起の際には首領直属のゼハート
隊として地球侵攻に参加したが、彼の周囲はかなり好意的になって
おり。以前とは打って変わって彼を信頼し、黙々と仕事をする部下達
に囲まれていたようだ。かつての失敗を知るならばレイル達の反応も
違ったものになっただろう。その観点から見るとここで情報の統制、
断絶といった事態が起きている。イゼルカントが不都合な事実を
握りつぶしていたとも言える。

一方で年齢の比較的高いザナルドは違った。彼の権限や首領の側近という
地位から過去の出来事を知っていたのか、ゼハートには不信の目を向けて
いた。そして彼が内偵で送り込んだフラムは僅かだがゼハートの過去を
知っていた。ゼハートを信頼するレイルと違い、フラムはどこか一線を
引いた態度を取っていた。この両者の違いもまた彼を苦しませていたかも
しれない。

【関連記事】
 ゼハートの最後の行動について
 http://d.hatena.ne.jp/UN64_RGB/20121117/1353161809

セカンドムーンの構造について

球体部分に居住区画があるようだが、ヴェイガンに重力制御装置
の類は無いようなので、他のコロニーと同じく遠心力で擬似的に
重力を再現してると思われる。とはいえこの球体は外部から見る
限り回っていない。またラ・グラミスが接続してエネルギー供給
を受けている様子から球体構造は二重になっていると推測される。
外殻はマーズレイ対策のシールド装置(効果は限定的)となっており、
居住区になる内殻だけが回転しているのかもしれない。

地球連邦の国家規模について考える

AGE世界の地球連邦は実態があまり描写されなかった。そのため
どの程度の規模かよく分らない所だ。とりあえずアニメ版や追憶
のシドを元に推測すると、地球連邦は版図こそ大きいものの、それ
に見合うほどの人口はいないのかもしれない。これは旧国家戦争や
火星移民による人口減少が原因だと思われる。旧時代に比べると
コロニーの数が減っている様子だし、経済活動等の生活圏の主軸
は地球本土へゆり戻しが起きているのだろうか。

アニメ 外伝漫画
エンジェル 名称不明x1(攻撃を受け崩壊)
オーヴァン
ノーラ
トルディア
ファーデーン
ミンスリー(中立地帯だがここに含む)
ソロンシティ
ノートラム
月の近くの名称不明コロニーx1
その他(推定四以上?)

アニメと外伝で登場したコロニーは合計十基となる。ここに表の一番下に
ある「その他」をどう加えるかが問題となる。これはフリット編で存在が
示唆された旧国家派閥の艦隊が駐留するコロニーだ。アンバット攻略に
向けてラクトが他のコロニーいる艦隊を引き連れて合流すると言ってる。
正規軍に属さない艦隊となると、当然これは旧国家派閥が支配する所だろう。

またここで実際に合流したのはエウバ・ザラムからそれぞれ二隻だった。
これが彼らの全戦力かどうかは怪しい。コロニーの防衛もあるため全ての
艦隊を投入するという事は無いと考えるのが妥当だろう。またグルーデック
がフォルダーEZ7との取引で要求した戦艦は四隻だった。彼があてもなく
そんな事を言うはずが無く、事前にザラムの保有戦力を調べた上での発言
だろう。

劇中描写から推測する限り、ザラムだけで戦艦を四隻以上保有しているのは
間違いないだろう。この艦船数がどうコロニーの数に関係するかと言えば
宇宙港の規格が絡んでくる。AGE世界のコロニーは共通規格で造られたドッキ
ングポートが登場する。ここに係留できる船の数は限度があるので、自ずと
コロニーの数にも影響してくる。仮に保有数が八隻なら最低でも二つのコロニー
に分散する。これでザラム側のコロニーは二基と仮定が出来る。そして対立する
エウバも対抗するために同数を揃えるだろう。そのためこちらも二基は必要になる。
このように推測すると旧国家派閥の支配するコロニーが最低でも四基存在したと
考えることが出来る。もっとも宇宙港は五隻しか係留できないので、一般船舶
の分を考慮すればより多くのコロニーへ分散するものと思われる。

とりあえずこの旧国家派閥の艦隊がいたコロニーを四基と仮決めし、地球圏に
十四基のコロニーが存在するとしよう。一基辺りの人口はどれくらいだろうか?
劇中ではとくに明示されていないので掴みどころが無い。小説版では五百万人
という記述が登場するので、暫定的にこれを当てはめてみると宇宙には約七千万
人が住んでいるという計算になる。二倍でも二分の一でも余り多いという印象は
無い。どちらかと言えば少ないと思えるし、これは劇中描写とあまり差が無い。

当然地球本土に住む人々もいるわけだが、連邦の首都が地上にあることから
国家の中心は当然地球という事になるだろう。無論そうなれば人口もかなり
多いはずだ。自然保護や環境復興などにより居住制限が無い限りは、宇宙と
同等かそれ以上の人々が住んでいるだろう。地上も七千万程度とすれば、地
球圏の総人口は約一億四千万人という事になる。地上が二倍でも二億一千万
人程度。これはかなり少ない。

日本の総人口(2011年)は一億二千万程度あり、米国は2010年の段階で三億八百
万人ほどである。世界人口で七十億と言われる時代であるから、AGE世界の人口
規模は非常に小さい。

これに絡んだ話としては連邦軍の組織規模がある。追憶のシドに登場する第七
艦隊の総数は約十隻であり、これを一個艦隊の定数と見るなら地球圏の宇宙艦隊
は最低でも約八十隻ほど存在すると考えられる。当然これ以外にもビッグリング
所属艦隊が存在するので、全体の総数は百隻近くはあるだろう。
(地上軍にも戦艦が配備されているようだが、アクト3の例を見ると地方基地に
 戦艦はいない模様)

総人口や活動圏の規模を踏まえると、連邦宇宙軍の規模はやや小さいようにも
思える。しかしこれ以外にも地球本土の防衛を担う地上軍もいる以上、限られた
国力ではこれが限界なのだろう。

とまあ色々考えたが具体的な事ははっきりしない。しかし一ついえる事は
地球連邦の人口はあまり多くないだろうということだ。

 ※なおヴェイガンは火星移民時に十六基のコロニーを建造している。
  数こそ連邦側に匹敵するが、このタイプはテラフォーミングなどを
  考慮して大規模な工場ブロックが併設されているようだ。そのため
  一基辺りの収容人数は少ないだろう。
 ※ヴェイガン側の総人口は連邦の半分以下、せいぜい三分の一程度
  かもしれない。
 ※連邦軍の軍需、兵站はノートラムに集約して賄える程度の規模
  らしい。ノートラムの生産能力次第だが、コロニー一基で供給を
  満たせる程度なら宇宙軍の規模はそれほど大きくないのだろう。
 ※ラ・グラミス戦に集結した連邦軍は個人的な推測で約二十隻程度
  であった。上記での考察や、劇中での戦局を考慮すればさほど
  違和感は無い。各コロニーの防衛や地球への戦力派遣。それらを
  行ったうえでかき集めた最後の戦力だった。というのはまあまあ
  納得の出来る話だ。
 ※宇宙港に係留できる数は少ない。そのためビッグリングには多数
  の宇宙港が用意されている。各艦隊の母港がどこなのかは不明だが、
  一般のコロニーに長く留まる事は難しい。そのため各艦隊の活動
  拠点として宇宙要塞のようなものが各所に建設されていた可能性
  がある。

【関連記事】
 コロニー「ノートラム」の本来の役割について考える
 http://d.hatena.ne.jp/UN64_RGB/20130215/1360931072

 ラ・グラミス攻略戦序盤の動き
 http://d.hatena.ne.jp/UN64_RGB/20120916/1347795134

ビシディアンで戦った無名の戦士達とアセムの決断

ビシディアンは連邦軍特殊部隊出身であるアングラッゾが作り上げた反連邦組織だった。
彼はA.G.83年生まれで天使の落日当時は18歳。恐らく最初期の連邦軍に入隊したと
推測される。同期のメンバーと共に打倒UE(ヴェイガン)を誓い合い、未知の敵と戦い
続ける事になる。しかし彼らの活動が実を結ぶ事は無く、07年にはオーヴァンが
攻撃を受け、さらに15年にはノーラも攻撃を受け崩壊してしまう。そしてこのノーラ崩壊
の混乱に乗じてアリンストン基地のグルーデック中佐がディーヴァを占拠、独自にUEの
拠点宇宙要塞アンバットへ攻撃を仕掛ける。後に蝙蝠退治戦役と呼ばれる一連の動乱は
地球圏に大きな波紋をもたらす事になるのだが、政府発表を知ったアングラッゾはさぞ
驚いたに違いない。連邦軍がアンバット攻略作戦に向けて動いた事実は無いのだ。当時
既に32歳、決して上の動向が掴めない位置にいたわけではないだろう。この14年常に
負け続けた連邦軍が突然UEの拠点を攻め落とせたという不自然さ。恐らくこの頃から
政府、連邦軍内部への疑念が生まれ始めたのではないだろうか?

AG120年代、アングラッゾが連邦に反旗を翻す日が来る。同期の一人であり第七艦隊を
率いるグース・マイルスがヴェイガンと内通し、新造戦艦の横流しを目論んでいた事が
発覚したのだ。終わる事のない戦争に信念を歪め、腐っていく者達を見てきたアング
ラッゾは連邦内部の腐敗を断つため、そのような者達を排除する組織を作ろうと決意
する。軍人でもある恋人と別れを告げ、彼は自ら帰る場所を断ち反逆者として戦う道
を歩んだ。この彼の行動に賛同する者や支持者は多かったらしく、連邦軍の追跡を
振り切り第三勢力として着々と組織を作り上げていったようだ。特に技術面、武器供与
でマッドーナ工房が支援者として動いたのはかなり大きいだろう。

AG130年代、あるコロニーがヴェイガンに攻撃された。ビシディアンが救援に向かいそこ
で一人の少年を救助する。それが後に次期首領とまで言われたウィービック・ランブロで
あった。孤児院育ちであった彼は仲間がヴェイガンによって皆殺しにあった事を悔やみ、
自身の無力さから誰かを守れる力を欲してビシディアンへの参加を決意する。

いつの頃か不明だが、アングラッゾは秘宝と呼ばれる旧時代の科学技術を収めたデータ
ベース、EXA-DBの存在を知る。ここには当然今の連邦軍を上回る兵器もあるため彼は
腐敗した連邦を倒し、戦争を終らせる切り札として捜索を始める。AG151年には最終座標
の把握に成功し、今や首領の一番弟子として育ったウィービックを向かわせたのだが
EXA-DBの護衛として配備されていた無人機シドの抵抗に合い確保に失敗する。代わりに
コールドスリープしていた科学者であり、管理人のレウナ・イナーシュを連れ帰るの
だが、彼女から秘宝の真相を知ったウィービックはEXA-DBが戦争の激化を招くと危惧
して利用に反対する。しかしこれにアングラッゾは激怒した。内心では理解を示す一方、
既に戦争は半世紀も継続している。彼自身かつてUEを倒すと立ち上がった一人だ。今や
68歳となり病にも蝕まれる状態となっては終戦の鍵と言えるEXA-DBを諦めるわけには
いかなかった。

そしてビシディアンに世代交代という転機が訪れる。秘宝という存在に触れたことを
きっかけにシドがバロノークへ襲来、ウィービックは戦いの果てに行方不明となる。
捜索に出た仲間達はデブリの漂う宙域でガンダムの残骸を回収するが、そこに瀕死の
セムがいた事から治療を行う。次期首領であったウィービックの事実上の死、迫る
死期からアングラッゾは後継者選びを迫られる事になる。意識を取り戻したアセムから
ウィービックの最後を聞いたアングラッゾは、彼の素性や考えを悟り。今、彼こそが
ビシディアンを率いるに相応しいと判断、その場で彼を組織へスカウトする。

当然アセムがそんな話など承諾する訳がなかった。しかしそこでアングラッゾが話した
秘宝と呼ばれるEXA-DBという存在が彼を引き止める。旧時代の失われた科学技術を収めた
データベース、過去の戦争や兵器を網羅するそれが地球圏のどこかをさ迷っているという。
もちろんそれが連邦、ヴェイガンどちらかに渡れば戦局を一変させる結果をもたらすだろう。
そしてこの戦争は"普通"ではない、始めに目的があったのか分らないし、今もあるのか
判らないほど互いを際限なく殺しあうだけに至っていた。秘宝はそれをより強く、確実
に後押しする。アングラッゾはこれが両陣営のどちらかに渡ればミリタリーバランスが
激変し、一方の国家が滅亡するだろうと予測していた。これが与太話でないのはアセム
自身が身をもって知っていた。Xラウンダー相手でも互角以上に渡り合えるまでの技量を
持ち、地球圏で用意できる最高峰のMS。ガンダムAGE2を持ってしてもシド相手には死を
覚悟する有様だった。シドという異形の存在がその背後にあるEXA-DBの危険性を伺わせる。

連邦軍兵士であるアセムがこの情報を持ち帰れば、総司令である父親が確実に動くだろう。
しかしその結果、実際にEXA-DBを確保できたとするとどうだろうか。十年前のクーデター
フリットはどちらかが滅びるまで戦争は続くと断言した。ソロンシティでも住民を巻き
込んだ軍事行動を取っていたあの人だ。アングラッゾが考えるように秘宝を渡せば喜んで
ヴェイガンを皆殺しにするだろう。そしてそれはアセムの望む事ではなかった。戦争、
戦いを憎んだとしても人までは憎めない。フリットの考えには賛同できないものの、地球
側の人々を守るために彼は軍に残っていた。しかしそれも限界に達し、彼は退役を決意して
いた。かつてゼハートに指摘されたとおり彼は戦いに向いていなかったのだ。アセム
成したい事と、現実に出来る事の齟齬は彼を苦しめ続け。軍の命令に従い私情を殺して
戦い続ける事が難しくなっていた。そこへアングラッゾのスカウト話が舞い込んだのだ。

滅茶苦茶な話ではあるが、アセムが望む道、連邦に所属する限り決して出来ない事が可能
となるチャンスでもあった。それは別としてもEXA-DBをヴェイガンに渡すわけにもいかな
いし。事実を知った今、これを放置して帰るのも無理だ。連邦に知らせず、極秘裏に回収
するには第三の道しかない。そしてシド相手に共闘し、未帰還となったウィービックの生き
様がアセムを動かした。自分が生まれる前から続く戦争、戦いから人々が逃れる事は出来
ないという考えに至り、彼は諦めを実感していた。そんな時に出会ったウィービックは
絶望的な状況にも決して怯まず、生きるために戦い続けアセムを励ました。

EXA-DBの解放を防いで滅亡を回避する。そして連邦とヴェイガンが繰り広げる"戦争"そのもの
へ戦いを挑む形になったのだろう。こうなれば世間では戦死扱いとなり家族とも顔を合わす
ことが出来ない。そして反連邦組織へ参加した事が露見すれば非難を浴びる事になるだろう。
それでも仲間や家族を守る事に繋がると考え、アセムはビシディアンへ参加し苦難の道を
選んだ。

後にアセムが引き継いだビシディアンだが、二代目となってもその組織や行動は大きく
変わることは無かった。連邦軍の不正を叩き、ヴェイガンに襲われる人々を助け、EXA-DBの
開封を防ぐ。いくら少数精鋭とはいえ、たった一隻の戦艦で出来る事はたかが知れている。
そのため彼らの活動は非常に困難を極めただろう。それだけにビシディアンの面々は連邦軍
に負けない強さを必然的に身に付けたと考えられる。

そして彼らの行動は決して無駄ではなかった。戦争の熾烈化を防ごうという行動はある種の
冷却効果をもたらし、血で血を洗う戦争に緩やかなブレーキを掛けた。その間、連邦は上層部
の世代交代が進み、穏健派が前に出始めた。さらに人類選別というイゼルカントの野望にも
抵抗する結果となった。アングラッゾと無名の戦士達が起した小さな抵抗運動は半世紀以上も
紡がれ、ラ・グラミス戦における休戦が実現した遠因にもなった。

アングラッゾの作った組織は戦争終結への道筋を探す。その選択肢、希望を残すという点で
大きな役割を担ったと思う。本編であっさり休戦へ運べたのも、歴史の影で反逆者の汚名を
被ろうと平和な時代を夢見て戦った者達がいたからこそと言える。そこに英雄などは
いないし、たった一人の救世主で終わるほど戦争は都合のいい話ではないのだから。

 ※政府発表では連邦軍主導の作戦という話なので、旧国家派閥の艦隊が参戦した
  事実自体は認めているようだ。どちらにせよ軍内部での動向からすれば突然
  降って湧いた話なので、これが嘘であると言う事は見抜ける。また彼の同期は
  最初期の入隊であり、別々の所で働く彼らとの会話から組織全体を知る事も
  出来ただろう。
 ※アセム連邦軍が大規模作戦を実施する際に用意する戦略物資に狙いをつけ、
  輸送部隊を狙い撃ちにしていた。かつての仲間へ銃を向ける結果になるため
  殺さないように注意して戦闘を行い、MSを無力化している描写がある。
 ※キオ編でEXA-DBの情報を連邦に流していたが、これは情勢の変化があったため
  だろう。一つはフリットが権力の座から降りていた事。そして現在の連邦上層部
  は穏健派(アルグレアスなど)が占めている様子であり、間違った判断をしない
  だろうと期待できる。さらに戦局の激変があった。これまでは地球側の制宙権を
  連邦が押さえていたが、一斉蜂起で状況が一変して崩れてしまった。以前に比べる
  と格段にヴェイガンが動き回りやすい状態になった。こうなるとEXA-DBの捜索も
  何かと有利に働くだろう。そのため現有戦力がバロノーク一隻のビシディアンでは
  対応しきれない事情があった。
 ※ビシディアンの創設者アングラッゾは「追憶のシド」時点で68歳(AG151)と
  なっている。彼は軍人でもある恋人に別れを告げ。歩む道は違えど共に戦争を
  終らせるために戦おうと語り、姿を消した。事を成すために今の生活を諦める
  という点ではアセムもアングラッゾも似たような境遇になっている。そして
  ゼハートもヴェイガンの国民のために私情を殺して戦っている。この観点から
  見ると三人は同じとも言える。なおフリットは私怨で戦っているので別。
 ※アニメでは訳のわからない海賊コスプレ集団ビシディアンだが、外伝漫画では
  なぜ彼らが海賊として戦うのかがしっかり描写されている。さらにアセム
  海賊入りする理由もわりと筋の通る形で描かれており、アニメ側のいい加減さ
  には首を傾げるばかりで頭がもげそうになる次第だ。(そもそも描写に矛盾がある)
  漫画自体は新人の漫画家が描いているため描写的に粗い面もあるものの、回を
  重ねるごとに絵が上達し、全三巻と短編ながらしっかりまとまっている印象が
  ある。それだけに金銭的余裕があるのなら、この漫画は本編を見ていく上で
  読んでおく事をお勧めする。
  (メカと人物の対比がアニメと違うが特に意味は無い模様)
 ※アセムは自分が生まれる前から続く戦争という事象について、人類が逃れる
  事は出来ないと思ってた。そこで彼は今すぐ戦争を終らせる事は無理でも、
  戦争を人々から遠ざける事は出来るのではないか?と考えたようだ。
 ※なお追憶のシドに関しては、終盤の展開についてこのブログでは言及しない。

【関連記事】
 歴史の表舞台から去ったエウバのラクト。彼の願った未来とは
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 フリットに人生を狂わされた人々。ジラード・スプリガン
 はそれを象徴する一人だったのか
 http://d.hatena.ne.jp/UN64_RGB/20130210/1360512322

 アセム編とキオ編の間で起きていた連邦の疲弊と国民の飢餓
 http://d.hatena.ne.jp/UN64_RGB/20130204/1359985631

 マッドーナ工房がビシディアンに協力した理由?
 http://d.hatena.ne.jp/UN64_RGB/20121121/1353497205

雑記2

・AGE世界の軍用通信について
 フリット編「第10話激戦の日」ではビッグリングがディーヴァからの増援要請
 に対して回答を送っているが、その電文は暗号化されず平文で送信されたかの
 ような描写がある。キオ編「第31話戦慄 砂漠の亡霊」ではファントム3に関す
 る情報メッセージも受信すればすぐ読める状態であった。ただし「第33話大地
 に吠える」ではロストロウラン司令部から送られた作戦命令は暗号化されてお
 り、オペレーターのウォンが複号作業に取り掛かっている。情報の機密レベル
 に応じて暗号強度を使い分けているのだろうか

 ただフリット編の頃の連邦軍は軍隊としての規律があまりしっかりしていない
 様子で、部外者を平然と軍艦に乗り込ませ、艦内を好き勝手に歩き回らせてい
 る。さらにMSまで盗まれても犯人を捕まえないなど異常極まりない状態だった。
 これらからも判る通り、連邦軍はセキュリティに対する関心は非常に低かった
 ようだ。なのでビッグリングの送った電文にしても平文で発信した可能性が高
 い。このような機密への関心の低さは全編に渡って描写されており、アセム
 ではAGE2のデータがマッドーナ工房に流出し、キオ編でも敵の哨戒網を避けて
 航行する戦艦から兵士が家族向けのメールを送っていた。

 ※映像付きの通信に関してはレーザー通信によって傍受の可能性を減らし、暗
  号化強度を落とすなどしてリアルタイム会話を可能にしているのかも。
 ※ビシディアンはヴェイガンの無線通信をあっさり傍受していた。

・増援要請を拒否したビッグリング
 UEがファーデーンを攻撃した時、アダムスは総司令部に増援要請を出していた。
 しかしこれは適当な理由で拒否され、自分達だけで戦えという返答を送っている。
 第10話で垣間見えたビッグリングの意思だが、このメッセージの恐ろしいところ
 は現有戦力では対処が厳しいと判断し、わざわざ連邦軍の出動を要請したにも
 関わらず間に合わないから拒否して後は何もしないと宣言したところだ。普通
 はとにかく艦隊を急派しそうなものだが、いかに上層部が戦う事を嫌っている
 かが読み取れる。この辺りはビッグリング直属だったディアン・フォンロイド
 大佐も同様で、現場と上層部の考えに違いがある。アダムスはこの一件から
 連邦軍上層部が戦う意思を持たないと知り、自らの職務を果たせるグルーデック
 の行動に参加したのだろう。

・なぜか無い民間防衛組織
 戦争があり、それが恒常的に続くとなれば民間レベルでも防衛意識が高まり自
 警団などが組織されたりするものだが、AGE世界の連邦ではそのようなものが
 ほとんど確認できない。外伝漫画ではミンスリーに私兵部隊を組織する者が
 いたが、ここは中立コロニーという特殊な事情もあるので例外だ。一方アニメ
 本編では皆無であり、それに近いのはフリットの自宅に居た召使二名くらいだ。
 民生用MSが広く普及した世界であり、旧国家派閥が武装MSを用意しているよう
 な状態であるから、自衛に関するハードルは比較的低いはずだ。それなのに市
 民の自衛行動が見られないのはかなり不自然な話であり、連邦政府(軍)によっ
 て厳しく制限されているのかもしれない。

 とくにビシディアンのような存在やクーデター以降は反政府運動に対する警戒
 から民間での武装を取り締まる事は十分予測される。

ヴェイガンのコードとEXA-DBサブユニットに関連はあるのか

追憶のシドにある謎といえばEXA-DBの所在を記したコードの存在であり、
それが連邦とヴェイガンに分散していた点だ。アニメや漫画が一通り終
わり、これについて考えてみたが。ヴェイガンが持っていたコードは
イゼルカントの手に入れたEXA-DBサブユニットに由来するものなのかも
しれない。

漫画ではメインサーバーであるEXA-DBにハッキングの痕跡があったという。
しかしAG80年年代の科学技術を凌駕するであろう旧時代の産物にハッキング
を仕掛けるのは並大抵の事ではないだろう。それに護衛のシドという存在も
あり、直接A310へ出向いて接触するのは基本的に不可能と見るのが妥当だ。
(漫画の描写から、もしイゼルカントが侵入していればレウナは起きるはず)

そのような状況をから考えると、こういう流れだったのかもしれない。

出来事
1 イゼルカントが地球圏調査のために拠点を探している際、とある
小惑星で偶然サブユニットを確保する。
2 サブユニットを解析した結果、そこへ収められたメモリーの価値を知る。
3 さらに解析を進め、EXA-DB本体の存在を知る。
3 サブユニットを経由してメインへアクセスを試みる。
一時的に成功して一部のデータを引き出すも
メイン側が異常を検知して回線を遮断。
4 イゼルカントは引き出せた情報を元に軍を組織する。また残された
アクセスデータを元にメインの直接確保を試みる。この時の情報が
後にコードと呼ばれる存在になる。
5 ビシディアンがヴェイガンの捜索隊からコードを奪い、ラクトに解読を依頼する。

 ※A310とアニメの小惑星は外観や内部構造等から考えると別物と思える。
 ※ウィービックが操作装置に触れた際にレウナのコールドスリープ
  解除されていた。イゼルカントがA310へ出向いてハッキングするなら
  同様の事が起きていたはず。起きていた様子が無い事からあそこへ行
  ったとは考えにくい。またシドの妨害を突破する事も無理だろう。
 ※劇中描写から見る限り、イゼルカントはシドの妨害にあっていない
  ようだ。サブユニットの護衛にいたシドは故障か、不慮の事故で失
  われたのかも。
 ※この仮説でも連邦側にコードがあり、アングラッゾが保有していた
  理由は分らない。
 ※コードはそれ一つでは場所を特定できないようだ。漫画では二つを
  合わせることで初めて詳細な位置を特定していた。
 ※サブユニットの外観は不明だが、物理サーバーの一種と推測される。
  旧時代のデータを何の下準備も無く火星のコンピューターへダウン
  ロードするのは技術的に問題があるだろう。たぶん物理サーバーごと
  火星へ持ち帰り、AGEデバイスのように外部装置などからアクセスして
  データを引き出していたかもしれない。

【関連記事】
 レウナから見る旧時代の科学力や世界観など
 http://d.hatena.ne.jp/UN64_RGB/20130217/1361091321

第31話「戦慄 砂漠の亡霊」回の作戦について

ロストロウランへ向けて航行していたディーヴァは、砂漠に潜む無人機に
攻撃され不時着。アビス隊は対抗策を用意して無人機狩りを始めた。
今回はこれについて。

アビス隊はまずクランシェを飛ばし、潜伏中の無人機を誘き出す行動に出た。
敵は行動圏内に入る目標を順次攻撃するはずなのでこの習性を利用する。先の
襲撃から考えると敵は最も近い目標を攻撃し、他の無人機も呼び寄せるだろう。
そうなれば砲撃地点を逆探知して敵の所在を掴む事が出来る。あとは誰かがそこ
へビームを叩き込めば良い訳だ。スピードのある前衛が囮で敵の所在を掴み、
後衛がその情報を元に砲撃を加えるそういうことらしい。

ところでこの作戦についてキオは何も知らなかったようだ。フリットだけは把握
していたので、大人達だけで話を進めていた模様。

※本来はフォートレス完成後に攻める予定だった模様。しかし敵の行動が
 早く、やむなく戦闘状態に突入したようだ。
※あまり関係のない事だが、個人的にこの回は非常に出来が良い。未知の敵に
 痛手を被る→解析・対抗策の検討→反撃へ転じる。敵の存在が明らかになれば
 クランシェを飛ばして警戒するなど。情報密度、話のテンポや流れ、整合性等
 の統合的完成度は非常に高いと思える。個人的には一番かもしれない。