宇宙海賊ビシディアンのMSがマッドーナ系で統一される理由

 反連邦組織のビシディアンは主戦力たるMS部隊をマッドーナ系で
 固めている。これは低コストで頭数を揃えるのが容易であること、
 入手と運用が容易なシリーズだったためと考えられる。非正規戦
 が前提で確実な補給路の確立と維持が困難なビシディアンにとって、
 掃いて捨てるほどあったかどうかまでは分らないが、民生用から
 軍用まで幅広くラインナップのあったマッドーナ系MSは非常に都合
 の良いものだったのだろう。

 彼らのMSはアセムのダークハウンドやウィービックのGサイフォスなど
 を除けば、Gエグゼスジャックエッジとシャルドールローグだけだが、
 これらは大元へ辿ると全てシャルドール(形式番号CMS-B/67)へ行き着く。
 同じシャルドール系列機のため補給や整備、パーツの互換性などで
 他には無い利点を持ち、生産数の多さから中古品の入手も期待できる。
 地球圏で大量に出回ったタイプなので連邦軍側による入手経路の追跡
 が困難でもある。

 特に軍用のシャルドール改(RGE-C350)は連邦の量産機として大量生産
 された実績がある。AG140年代には後継機としてアデルの実戦配備が決定し、
 B890とC350の入れ替えが進んでいる背景がある。そのため二級線や予備
 戦力として後方への配置換えとならなかったC350はスクラップ処分に
 回される事になるだろう。ビシディアンはそこを狙って不正手段で関連
 部品を入手し、戦力の維持に努めていたのかもしれない。

 とくにスクラップ処分になるC350の行き先は気になる。メーカー送り
 ならまず第一にマッドーナ工房だろう。工房は裏で協力しているので、
 そこからなら書類を誤魔化して横流しする線もある。他にも旧国家派閥
 のラクトが協力者としているので、彼の息の掛かった企業から回して貰う
 のも十分考えられる。
 (書類を誤魔化すと言っても、実験機材として使い潰したとでも
  言い張ってもいい。技術面で頭の上がらない連邦が追求するのは難しい)

 一方でジェノアスII(RGE-B890)を利用しなかったの理由はなんだろうか。
 それは機体の拡張性の無さ、将来性が乏しかったのが原因だろう。
 元々はデスペラードを流用した急造機だった。それを改造して二十年
 も使い倒せばいい加減限界へ突き当たるといったところだろう。採算を
 度外視して改修を施せば第一線を張れるかもしれないがビシディアン
 の組織規模から考えればこれを容認できる余裕は無く、それに見合う
 成果が出るかどうかは疑問だろう。対して元々シャルドール系は派生機
 を見越した設計のためまだ将来性があった。この差がビシディアンに
 選ばれた理由だろう。さらに付け加えるなら組織にジェノアス系と
 シャルドール系を混成運用するだけの余力が無かったと考えられる。

 MSの入手経路などは上記の通りだが、海賊仕様への改造はどこで
 行っただろうか。とりあえず直接マッドーナ工房など民間施設への
 委託はできないだろう。一体なら研究エリアなり機密エリアにでも放り
 込めば誤魔化せるだろうが、なにぶん数が多すぎるのでそこまで隠し
 通すのは厳しい。なので改造キットをマッドーナ工房かラクト側で
 用意し、これを受け取ったビシディアンがバロノーク内で実施したと思う。

 [MS本体の供給]
  解体処分となったC350をマッドーナ工房、エウバ派の民間企業から
  パーツ単位で横流ししてもらい、これを再組み立てする。
  直接買い付けるのは目立つためやりにくいだろう。
 [海賊仕様への改造]
  改造キット(ジャックエッジ、ローグ)を同じくマッドーナ工房か
  ラクト側の企業で用意してもらい、ビシディアン側が自力で改造した。
 [部品のストックなどについて]
  強奪した物資も含め、MS関連の部品は一部を地球圏に点在する
  デブリ帯の中に隠していたと思う。劇中では恒常的に物資の強奪
  を行っているようだが、奪った物(軍事物資)をどうしたかは言及
  されていない。義賊として振舞っているので、それらを売り捌く
  のも考えにくい。なのでバロノークへ保管できない分はどこか
  へ隠し、活動物資として消費していると思う。

 そんな感じなのかもしれない。

 ※ビシディアンのMSは形式番号から推測すると、まだ未登場の01、02
  が存在する。時期や数からジラ、ゼノ型の海賊仕様でもいたのだろう。
 ※形式番号のナンバーはローグ(003)、ジャックエッジ(004)、Gサイ
  フォス(005)となっている。
 ※Gエグゼスジャックエッジは部隊内でも腕利きの実力者向けで
  シャルドールローグは一般兵向け、Gサイフォスは次期首領の
  専用機と扱いがかなり明確化されている。
 ※漫画でも連邦軍と交戦した後に、シャルドール改の残骸を持ち帰る
  描写がある。とは言えこの時はコクピットを外して無力化した程度
  なので中のパイロットを放置するのも残酷だから捕虜として連れ帰
  ったとも見える。どちらにせよMSを奪うといった扱いだったので
  恒常的に持ち帰っている様子だ。解体して部品取りに利用
  しているのだろう。
 ※外伝漫画で登場したAG151年の第七艦隊は艦載機が何故かシャルドール
  改で統一されている。一方で海賊討伐に出動したラーガン隊やアセム
  の特務隊、そして行方不明になったアセム隊の捜索に出た救難部隊は
  アデルで統一されていた。
 ※漫画ではビシディアンのMS隊は損耗率が非常に高く、出るたびに何機か
  が撃墜されている状態。そのためMSそのものや整備パーツの入手難易度
  は死活問題かもしれない。
 ※ジェノアス系の限界についてはオブライトのOカスタムが良い例だろう。
  既に原型を留めない形にまで肥大化し、明らかにジェノアスに拘る
  合理的な理由が無い。
 ※AG160年代ともなれば外観は旧型機を模し、中身だけ最新鋭に
  しているかもしれない。

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