ディーヴァ級宇宙戦艦から考える連邦の国防計画

 ノーラへ入港した新造戦艦ディーヴァ、この
 艦はグルーデックの退職金代わりに持ち逃げされ
 アンバット攻略作戦に参加することになる。
 ミンスリーではAGEシステムによる改造プランに
 よって大規模改修が施され、強襲形態に変形
 した。さて変形する前の、本来のディーヴァとは
 どんな戦艦だったのだろうか?そしてディーヴァが
 量産されること無く、一隻しか登場しなかった理由
 とはなんだろうとか考えた結果について。
  ※この記事を書き終えた後に同級が登場している。

 ディーヴァの形状を見ると上からは三角形、正面から
 見ると長方形と言える。また各種兵装の配置や射線
 などを考慮すると、どうもこの戦艦は真正面からの撃ち
 合いを想定して建造されたように伺える。

 艦体の半分がカタパルトブロックに占められており、戦闘
 時にMS隊を射出すれば不要な装備となる。一方で居住
 区画や戦闘システム、推進機関等など艦の重要なシステム
 はこのカタパルトブロックに隠れる形となっており、真正面
 からの砲撃戦ならかなりの防御能力を期待できる。
 (そのためにはカタパルト内に多数の防御壁を出す必要があるが)

 対してダーウィン級の場合、双胴艦としての構造上、船体を
 連結する形になる中央部分に被弾すると致命傷に発展する
 可能性がある。カタパルトハッチから奥はMSデッキと
 推測されるが、その奥には推進システムが配置されている。
 真正面から撃ち合いを行った場合、MSデッキを貫通した
 ビームがそのまま主機を破壊する事もあり得るだろう。
 MSデッキへ飛び込んだビームが原因で主機が誘爆し、爆沈
 するかもしれない。爆沈しなくとも、船体が二つに裂ける
 可能性がある。このようにこの二隻を比較すると真正面からの
 砲撃戦ではディーヴァ級に分がある。

  ※実際にノートラム防衛戦で撃沈されたダーウィン級は
   真っ二つに裂けている。

 ではこのように書くと、防御能力が高そうに見えるディーヴァ級
 宇宙戦艦。この艦はどうのような理由から設計されたのだろうか。
 元々当時の地球圏はUEという敵が闊歩するものの、その正体は
 不明であり、対抗する連邦軍はどのような軍備を持てばいいか迷
 っていたのだろう。

 そこで連邦軍は仮想敵として、ほぼ同クラスの兵器を保有して
 いた旧国家派閥を設定した。彼らが保有する戦艦とダーウィン
 級はほぼ同じ設計思想で建造されている。MSも性能は同等と
 予測されるが装備ではビーム兵器を運用できるジェノアスが
 優位と見られていた。UEの正体が旧国家派閥だった場合、装備
 や物量差から連邦軍による鎮圧は可能であった。

 しかし純粋な戦艦同士による砲撃戦は、同型艦のため決定打に
 欠け。MS戦よりも優位とは言い難かった。そこで連邦軍
 ダーウィン級を超える新型戦艦の建造に着手した。前級以上の
 戦艦を配備出来れば、そのまま旧国家派閥軍の戦艦を抑える
 事になる。

 この新型艦は艦体をモジュール化したブロックで構成し、損壊の酷い
 ブロックは修理せず、入れ替える事でドック入り期間を短縮し、早期
 の戦列復帰を目指していた。このブロック工法を艦の運用にも取り
 入れたことで、カタパルトブロックを防御壁代わりにする事が可能
 となった。この設計・運用思想は連邦と言う強大な国力を持つ国家
 だからこそできるものであり、小規模な武装勢力には実行不可能
 なものだった。またこのモジュール構造の艦体は予想外のところで
 役立つ事になる。ミンスリーでディーヴァの改造を命令されたAGE
 システムは、この構造を応用することで短期間に改修を実行した。

 武装についてだが、ダーウィン級はビーム砲(ハイパーメガ粒子砲?)
 が主武装であり、これは旧国家派閥でも同じであった。戦闘を優位に
 進めるため、ビーム撹乱弾を標準装備。敵主砲を封じた後、対艦
 ミサイルによる飽和攻撃で撃破する事が想定されていた。
 このため主砲は艦首方向に一門、合計14基のミサイル発射管が装備
 されている。前級に比べると大幅に装備が減っているが、これは
 防御思想の違いから武装の数、配置が見直された結果である。これ
 以外に対空迎撃用の小型ビーム砲台が艦全体に多数設置されている。

  ※この場合カテゴリーとしてはミサイル戦艦として扱われている
   だろう。
  ※強襲形態時の側舷ミサイル発射管についてだが、変形前は艦橋横
   のミサイル発射管に隠れる形にある。元からの装備なのか、改造
   で増設されたのかは分からない。ただこのミサイル発射管が内蔵
   されたモジュール部分は、連邦と旧国家派閥軍に採用されている
   タイプにそっくりなので、もとから装備されていた可能性がある。
   その場合はこのブロックが横へスライドして展開していたのかも
   しれない。
  ※ミサイル発射管を内蔵したモジュールは三発型と四発型の二種類
   が存在し地球圏の軍艦に幅広く採用されている模様。

 MS部隊運用能力についてだが、この艦のカタパルトは横に九十度
 ロールした状態で設置されている非常に珍しいタイプだ。
 これは砲撃戦とMS射出を同時に行えるよう配慮した結果と考えら
 れる。前級では艦全体に満遍なく武装が配置され、前方に射出され
 るMSの進路と射線が重なる危険があり、砲撃戦を行いつつMS隊
 を射出する点で危険性があった。ディーヴァ級では武装配置を見直
 し、MSの射出進路と火砲の射線が交差しないように設計された。
 ただしこれはあくまで艦砲射撃の邪魔にならないようにとの考えで
 あり、MS部隊に対する配慮ではない。

  ※一般的にカタパルトで発艦した機体はジャンプしてシャトル
   から飛び出し、そのまま上昇していくケースが多い。
   戦艦から見ると、カタパルトから飛び出したMSが主砲など
   の射線軸に入り込む形になる。誤射を防ぐためにはMS側が
   進路修正を行うか、戦艦側が攻撃を止める形になる。
   この問題の解決策として模索された結果が、例の九十度ロール
   式カタパルトなのだろう。全軍に採用されない辺り、連邦軍
   の迷走具合が伺える。

 当時の連邦軍は艦隊決戦思想が主流であり、戦艦の活躍が戦局を
 左右すると考えていた。主力MSジェノアスが低性能であり、
 その程度の敵機ならダーウィン級の前には歯が立たないと見なされ
 ていた為である。この頃のMSは艦隊戦における補助兵器の位置付け
 であり、ディーヴァ級の不便なカタパルト配置が容認された遠因
 でもある。
  ※連邦軍はUEの人型機動兵器をジェノアスで鎮圧可能
   と楽観視していた。
  ※参考資料:第三話、第十二話「反逆者たちの船出」

 しかしUEの正体が露見したAG114年頃には戦艦とMSの力関係が
 逆転していた事が発覚。先進技術を持つヴェイガンの高性能MS
 の前には戦艦の迎撃能力は無力であることが証明された。
 このためこれ以降の戦艦はMS空母としての役割が加速し、戦場
 の花形から退くことになる。以降、戦艦は戦場で後方待機する事
 が多くなる。

 そのような背景からMS戦が重視されるようになった結果、対艦戦
 を重視したディーヴァ級の主力艦への採用、フォトンブラスター砲
 の正式採用は見送られた。しかし基本設計におけるMS搭載量の多さ、
 運用能力の高さは前級に勝るものがあり、これを継承・発展させた
 新型戦艦が計画される。これが後のアマデウス級とバロノーク級(仮称)
 となる。しかし建造コスト面ではダーウィン級を上回る巨額の予算
 が必要であり、広大な地球圏の勢力維持に多数の艦艇とMSが
 必要な状況下では大量建造に踏み切れなかった。そのため長らく
 連邦の主力艦はダーウィン級が担う事になる。

  ※連邦軍の戦艦はコロニーのドッキングポート規格に合うよう
   設計されているため、あまり大型化できない弱点がある。
   そのため大型艦を建造するよりは、適度なサイズで大量生産
   するしかない側面もあったと思われる。
  ※建造当初の計画ではアマデウス級並の火力を持たせる可能性が
   あったかもしれないが、蝙蝠退治戦役後はフォトンブラスター砲
   を装備した事によってこれ以上の火力増大が過剰装備と判断されたり。
   戦役後の連邦軍が艦隊決戦より、個艦防御を重視した戦術に移行して
   装備更新が放置された可能性がある。

 AG160年代には名称不明の新型戦艦(巡洋艦?)が登場しているが、これ
 がどのような経緯で建造されたかは不明だ。ただ半世紀以上にも及ぶ
 戦乱が続いた結果やその簡素な概観から、戦没したダーウィン級を補う
 べく量産された戦時標準船、戦時量産型戦艦の一種と推測される。

 なお最終決戦に登場したディーヴァ級は第49話冒頭で強襲形態に変形
 しているものが確認できる。

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