ヴェイガンの運用する戦艦について

 ヴェイガンの戦闘艦は全編に渡って細部が
 違うもののほぼ同じ概観だ。そして共通して
 ステルス装置の「見えざる傘」を標準装備
 している。

 武装はビーム砲のみに拘っており、ミサイル
 の類は見受けられない。これは火星側の物資
 不足か物理的保管スペースの関係上、かさばる
 荷物を避けただけと思われる。それを詰む位なら
 MSや長期活動用の物資を積載した方がいいと
 判断したのだろう。

 ヴェイガンにとって戦艦は地球圏で使う基地・拠点
 代わりでもあるので非常に重要で貴重品だった。
 そのため直接戦艦が戦闘する状況を避け、出来る
 限りMSのみを投入する作戦を取り、重要な作戦に限り
 戦艦を前線に出した。とくに艦艇の損傷を修理できる
 ドックや設備を持たないのでこの流れは仕方ない
 ことであった。大型艦艇の補給・整備が可能と思わ
 れる宇宙要塞アンバットが、グルーデックの決起に
 よって陥落したのは大きな痛手と思う。

 またこの戦艦はビーム砲を装備しているものの、
 その配置は非常に偏っており、艦の進路方向を
 カバーするだけで全周囲への対応が不可能な
 設計になっている。そのため敵機に接近された
 場合は迎撃が非常に困難と想像される。

 アニメの描写から見ると、このビーム砲は艦首
 前面に集中配備、砲塔が旋回してない、主砲の仰角
 が水平のまま、といった感じなので文字通り固定砲台
 なのだろう。そのため主砲群の照準内に目標を捕らえる
 場合、艦を目標の真正面に向ける必要がある。これは
 戦艦の火力を最大限利用する場合も同様だ。
 そのためビッグリング攻略、ノートラム制圧作戦、
 ラ・グラミス防衛線では敵陣へ向け真正面から対応して
 いた。またアンバット戦で登場した戦艦がわざわざディー
 ヴァと真正面から砲撃したのも同様の理由だ。艦砲を
 フル活用するならそうするしかない。そしてディーヴァ
 にとってこれはフォトンブラスターを使う上で願ったり
 適ったりの状態だった。

 連邦軍がヴェイガン艦へ直接攻撃を仕掛ける場合、特異な
 砲塔配置を考慮すれば、艦の真正面を避けて回り込むのが
 上策となる。直援のMSを突破して装甲防御が弱いであろう
 艦尾の推進装置を集中的に叩くか、抵抗が弱いであろう
 わき腹を突けば容易く撃沈できる。

 三胴艦タイプは艦の外周に固定砲塔を配置、中央が
 リニアカタパルトになっている。このような設計だから艦
 の真正面は艦砲の届かない弱点がある。第十話「激戦の日」
 でドンボヤージが特攻した際はUE側にとって非常に困る
 事態だっただろう。艦砲の死角に入り込まれると、あとは
 直援MSに迎撃を任せるしかない。これを切り抜けられると
 打つ手が無いわけだ。そのためドンの行動は敵を引き付ける
 のに十分な効果を出したと思う。その隙が総崩れとなりつつ
 あったザラム・エウバ連合の建て直しに繋がった。


 ※三胴艦はアセム編でファボーゼと呼称されていた。
  このタイプはビッグリング攻略戦で連邦のMSに
  取り付かれ一隻撃沈した。
 ※戦艦が連邦側に捕捉されるほど前線に進出した例は
  重要な拠点攻略か防衛線がほとんどだ。ディーヴァへ
  攻撃を仕掛けたケースはMSばかりで戦艦は後方待機
  が多い。
 ※ダウネスの推進装置はAGE1のゼフルドランチャーから
  発射された二発の大型ミサイルで機能を破壊された。
 ※キオ編で登場した新型の戦闘艦は下部にもビーム砲を
  装備したタイプが存在する。
 ※AGE3捕獲でディーヴァを前後から挟み撃ちにしたのも
  砲塔配置が少なからず影響しているだろう。
 ※呼称としては「ファボーゼ」「ファメナス」「ファゼオス」
  等がある

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