欠陥兵器だったディグマゼノン砲とキオ編の戦局について

キオ編でビッグリングを破壊し、見事地球への侵入路を切り開いた宇宙要塞
ラ・グラミス。そこに搭載された巨大ビーム兵器ディグマゼノン砲は連邦軍
に衛星軌道上からの狙撃を警戒させるほどの存在であった。しかし連邦側の
大規模反抗作戦では地球へ殺到する艦隊に目立った攻撃をせず、あっさり
制宙権を譲り渡したようだ。その後はどこかへ雲隠れをし続け、ルナベース
攻防戦でもこの要塞は静観を守っていた。ビッグリング攻撃以降、その動向
が確認されたのは地球圏へ到着したセカンドムーンに合流した時のみであった。

今回は本編描写から推測するラ・グラミスの性能、機能、武装などについて。

ラ・グラミスは見えざる傘を装備した移動要塞だが、そのステルス性は連邦の
探知システムを突破できるほどの性能らしい。航行能力も申し分なく、艦隊
と連携した作戦行動が可能なようだ。一方で全長8kmに渡るという途方も無い
巨大さを誇るわりには拠点としての能力は低いように見え。特異な形状が仇と
なってダウネス級に比べると居住性は劣り、戦略物資の備蓄能力、戦艦の係留
能力は無いものと推測される。

要塞は多数のユニット群を組み合わせた構造で構成され、他に例を見ない
珍しい設計になっている。構造体は分離合体、形状変化やユニット群の追加
による全長の延長も可能らしい。さらにどういう理屈なのかセカンドムーン
への接続によってディグマゼノン砲のエネルギー充填も出来る。ただし分離
合体、形状変化を駆使してもビーム砲は一門のみであり、攻撃能力そのものに
大きな変化は無い模様だ。

アニメ終盤で判明した事だが、ディグマゼノン砲の発射間隔は非常に長い様子
で、非常手段としてセカンドムーンからエネルギー供給を受けないと短時間
での次弾発射は不可能な模様。ビーム砲の性能はその見た目から超長距離狙撃
が実行できる戦略兵器に思えるが、ビッグリング攻撃時の位置関係から見た目
に反して有効射程は長くないのかもしれない。

宇宙要塞と定義されているが、ものとしてはディグマゼノン砲の運用に全てを
賭けている様子だ。自前の防御能力は無く、直援MS隊や護衛艦隊が無ければ
無防備も同然であり、非常に脆い要塞である。このようにして考えるとこの
要塞は連射の効かない大型ビーム砲一門で何をしていたのか。

初陣以降はビッグリング破壊で見せ付けたその攻撃力を活かし、連邦地上軍
を威嚇していたと推測される。それによってヴェイガン降下部隊が自由に
動き回れる状況を作った。連邦軍からすれば衛星軌道上に張り付いた敵要塞
による狙撃(実際にその能力があったかは怪しい)を恐れ、部隊の集結や大部隊
の行動を控える流れになる。後に連邦宇宙軍を動員した大規模反抗作戦が実施
されるがこの時地球へ殺到する宇宙艦隊に対してラ・グラミスは戦わずに逃げた。
これは妥当な判断だろう。武装は巨大ビーム砲一門のみであり、連射も不可能。
第一射でいくらかの打撃は与える事ができるだろう。しかし第二射を撃つ余裕
があるだろうか?そしてその攻撃で敵艦隊を殲滅できるだろうか?要塞の能力
を鑑みれば長期戦は敗北を意味する。短期決戦で勝利が望めないなら逃げの
一手が最善だ。連邦は主力部隊を差し向けた。連中にすればラ・グラミスは
地球奪還のファーストステップとして必ず叩き潰す必要がある。そのため見逃
すという選択肢は無いだろう。いくら姿を消せるといっても攻略部隊を差し向
けられ、包囲網が敷かれてしまえば意味は無い。だからラ・グラミスは戦わず
に撤退したのだろう。その後は来るべき最終決戦まで戦力を温存するべく
ひたすら逃げ回っていたのかもしれない。

 ※ラ・グラミスはその能力から積極的に実戦へ投入されず、最初に強大な
  攻撃力を啓示して相手を威圧する方向で運用されたようだ。
 ※まるで超巨大な自走砲のようだ。過去に存在した大型列車砲のように
  一回辺りの攻撃は凄まじいものの、それを運用するための手順、準備が
  大規模化して動きにくい存在になったのと似ている。
 ※ビーム砲は多数のビームを一点に集約して撃ち出す特殊な方法を
  用いており、他のビーム兵器に比べると収束率で劣っている可能性
  がある。このような形になったのもヴェイガンに超大型ビーム砲を
  作る技術が無く、多数の小型ビームを束ねる事で同等の物を得ようと
  頑張った結果なのかもしれない。
 ※探知システムを突破しているが、連邦軍内部に潜入したスパイによる
  破壊工作(サイバー攻撃)の可能性もある。
 ※ルナベース攻防戦にラ・グラミスが参戦した場合、連邦軍の敗北は
  確実であった。しかしゼハートは援護要請を出さなかった。
  彼我の戦力差からその必要が無いと言うのは分るが、長期的に考えれば
  戦力は出来るだけ無傷で温存したいところだ。そのため効率的に敵を
  倒す事は考えるだろうし、そこでディグマゼノン砲の使用を検討する
  のはごく自然な流れだ。これが出来なかったのは砲になんらかの制約
  があったか、それとも位置関係から射線の確保が間に合わない。または
  連絡手段が無かったと推測される。
 ※砲撃を受ける直前のビッグリング管制室のモニターには螺旋状(DNA?)の
  物体が表示されているが、ラ・グラミスとの関係性は不明。
 ※最終決戦でセカンドムーンからエネルギー供給を行わなかった場合、
  第二射が可能だったのかは怪しい。
 ※ラ・グラミスのスケールについては月刊モデルグラフィックス11号にて
  言及あり
 ※ディグマゼノン砲のサイズはビッグリングとの比較から直径6km前後
  くらいか。正確には不明だが超大型サイズであることに違いは無い。
  攻撃シーンを見ると微妙に狙いが逸れているように見えるので射撃
  精度は高くないのかもしれない。
 ※一会戦辺り何発撃てたのかは謎であり、せいぜい一発が良い所だった
  のではないだろうか。発射間隔の長さから二発目を撃てる頃には戦場
  の流れに大きな変化が起きて撃つ機会を逃している可能性が高い。
 ※使えそうで使えない微妙な性能だが、これもイゼルカントの真の目的
  が原因なのかも。

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