セカンドムーンの地球帰還と和平の可能性

 戦争が約六十年も続き、キオ編で積極的な
 攻勢に出て三ヶ月。ついにセカンドムーンが
 地球圏へやって来た。この人工天体には紫の発光
 現象があるので、ヴェイガン特有の推進機関を
 備え付けて移動能力を得ているようだ。
 (十分な装置とエネルギーを供給できれば、小惑星
  クラスでも動かせるようなのでかなり凄い)

 そこで問題なのはなぜ今頃帰ってきたのか?という
 事だが、これは結局例のエデンプロジェクト。
 優れた種を選び抜くというイゼルカントの計画
 に合わせた行動なのだろう。

 最終的な選別作業を行うため、火星の一般市民を
 地球圏へ連れ帰った。表向きは地球への帰還という
 事になっているが、実際にはエデンの住民認定試験
 の会場へのこのことやって来たという感じだ。
 ※これまでは鎖国政策の必要性、情報封鎖のために
   戦局を理由に帰還を先延ばしにしたのだろう

 問題はここで選抜試験に漏れた人達はどうなるかだ。
 イゼルカントの語る理想郷に愚かな種族は邪魔な存在に
 違いない。共存はあり得ないので抹殺の対象のはず。
 真の目的を知ったり、聞かされた者は間違いなく怒る
 だろうしこれを防ごうと抵抗するだろう。合格者も
 不合格者も彼の話しに従う保障はどこにも無い。

 そう考えるとこのエデンプロジェクトは最後の抵抗を
 どう排除するか?という所に尽きる。
 連邦とヴェイガンが共通の敵に対して手を組むって狙いなら
 それで問題はないのだろうけど。とくにイゼルカントに
 忠実な戦力が連邦、ヴェイガン双方を相手に戦って勝てる
 可能性は限りなく低いだろう。
 (ヴェイガン製は操縦システムを乗っ取れるのでそれで
  どうにかするつもりかもしれない)

 また新人類に旧人類の負の歴史を引き継がせるかどうかも
 気になる。デザインベイビーやクローニング技術らしき
 ものがヴェイガンに存在することから、新人類の可能性を
 秘めた者の遺伝子情報だけを残し。地球圏を一度滅ぼして
 文明や歴史の痕跡を消し去り、その後に合格者をクローニング
 で復活させてエデンに解放するつもりなのか?とも思えてきた。
 そんなわけで終盤はイゼルカントがどんな手段を講じて
 旧人類と新人類を入れ替えるのかが注目点かもしれない。

 そして月面基地ルナベース攻防戦では初めて連邦とヴェイガンの
 交渉が成功したようだ。これは結構物語の着地点を示している
 と思う。かつてフリットが対峙したギーラゾイはかなりの狂信者
 であり、ヴェイガン相手に交渉することが困難であると描写されて
 いた。兵士は死を恐れない。感情が無い。とか言っていたが、
 劇中描写から見ればアンバットの兵士くらいだ。
 これはアンバットへ進出したヴェイガン軍の第一陣を取り巻く
 環境が原因だろう。

 AG80年代の火星圏は夢も希望も無い世界だったので、みんな
 感情を失っていった。そんな時の兵士なので感情が無かった。
 しかし地球帰還計画が始まった結果、彼らに一つの希望が
 生まれたわけだ。だから後の世代は徐々に感情が取り戻
 された。そしてフリット編の頃はイゼルカントの思惑から
 ヴェイガンが勝っては駄目なので約14年も不自然な軍事
 行動を取り続けていた。ここで首領の指揮に疑問を持たれ
 ては困る。そこで第一陣はとりわけ感情を失った者や、
 イゼルカントの信望者を選び抜いて送り込んだのだろう。

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