歴史の表舞台から去ったエウバのラクト。彼の願った未来とは

フリット編に登場した旧国家派閥エウバの若きリーダー、ラクト・エルファメル
は長らくザラムとの小競り合いを繰り広げ、ファーデーン市民に大いに迷惑を掛け
ていた。しかしUE襲来を機に抗争を止め、人々を守るためにザラムと同盟を結ぶ。

この時初めて敵対派閥のドン・ボヤージと和解に向けて会話を交わす。ラクトは
握手をしようと手を差し出したものの、まだ戦いは始まったばかりと思ったのか
躊躇して止めてしまう。そして次の戦闘でボヤージは戦死してしまったため、
二度と握手をする機会が訪れる事はなかった。

そんなラクトは決闘を申し込むとか言いながら他人の家の敷地へ爆弾を投げ込む
非常識さがあったものの。一方では旧国家派閥を率いるリーダーという立場から
根は真面目らしく。コロニー防衛後は戦死者の弔いを所属で区別することなく
行っていた。長年の宿敵であり、エウバ・ザラム連合の窮地を救ったボヤージの
行動は彼に大きな影響を与える事になる。

AG.115年、後に蝙蝠退治戦役と呼ばれる戦いの中で彼は人々を守るために立ち
上がった訳だが、そのきっかけとなったのはフリットの行動だった。イワーク
・ブライアンが語る旧国家派閥同士の無益な抗争、しわ寄せを強いられる市民。
平和なノーラ(もう無いけど)からでは想像のつかない非常識な世界にガンダム
使って介入した事が全ての始まりであった。

そんな事もあり、フリットもまた彼の人生に大きな影響を与えたわけだが。同志
とまで呼んだフリットは豹変しつつあった。命の大切さを説いた彼は連邦軍
入隊。25年後には大部隊を指揮する立場になる。かつてはコロニー内部での戦闘
で周囲への被害を懸念していたが、この頃になるとヴェイガンを倒すためなら
市民への被害も止む無しという考えに変化していた。その後彼はクーデターを
実行し、ヴェイガン殲滅のために世界中を巻き込む暴挙に出る。より戦争は激化
し、10年後にはコロニーへの被害も予測されるような軍事作戦も実行するよう
になっていた。

長い歳月の果てにかつて同志と呼んだ少年の面影は消え失せていた。ボヤージが
そうであったように人々を守る。そのために彼はかつて共に戦った仲間と決別
する道を選んだようだ。ボヤージが死に際に語った「派閥争いの無い平和な時代
などありえると思うか」この問いに対する答えはその後の彼の行動を決定付けた。

クーデターによって連邦軍を手中に収めたフリットはヴェイガン殲滅のために
終わりなき戦争を突き進んでいた。まるで過去にエウバとザラムが際限なく争って
いたように。ヴェイガン殲滅ではなく、戦争を終らせる。そしてボヤージが夢見た
であろう平和な時代を到来させる。そのためにラクトは考えの近いビシディアン
への支援を行ったのだろう。

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